【民法改正】総則(法律行為と意思表示)

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法律行為

①法律行為とは

法律要件の中でも、意思表示を要素とするものを法律行為という。

 

 

②法律行為の分類

A単独行為

・行為者一人の単一の意思表示でできるもの

B契約

・2個以上の意思表示の合致でできるもの

C合同行為

・数人が共同して同一目的に向かってする意思表示の結合

 

【準法律行為】

・表現行為(催告や通知など)

・非表現行為(所有の意思など)

 

 

③法律行為の成立要件・有効要件

【成立要件】

当事者が、目的をもって意思表示すること

 

【有効要件】

①当事者が能力を有すること

 

②目的が適法であること

第91条 法律行為の当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う。

→公の秩序に関する規定として、これと異なる定めをすることができない(強行規定)。強行規定に反する法律行為は無効である。

 

③目的が社会的妥当性を有すること

第90条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は無効である。

 

④意思表示につき、意思の表示が一致し、かつ、意思の成立過程に瑕疵がないこと

 

 

意思表示

①意思表示するまでの過程

A動機

→近くに駅もできるし、この辺りに土地が欲しいなと思う

B内心的効果意思

→いろいろ検討したけれど、ここの土地を買おうと思う

C表示意思

→この土地を買います、と不動産屋さんに言おうと思う

D表示行為

→不動産屋さんに「この土地を買います」と言う

 

【意思の不存在】

内心的効果意思と表示行為が一致しないこと。

(この土地を買うつもりはないのに、「この土地を買います」と言うこと)

①心裡留保②通謀虚偽表示③錯誤の3種類がある。

 

【瑕疵ある意思表示】

内心的効果意思と表示行為は一致しているが、内心的効果意思を形成する過程に瑕疵があること。

①詐欺②強迫がある。

 

 

②心裡留保

心裡留保とは、表示者が真意でないことを知りながら意思表示をすること。

【改正前】

第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

【改正後】

第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。

2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

【改正点】

・相手方の認識の対象が「真意」から「意思表示が真意ではないこと」に変更された。

・第三者の保護要件が明文化され、新設された。

 

 【まとめ】

心裡留保による意思表示の効果

原則 有効

例外 無効 (相手方が悪意・有過失の場合)

 

 

③虚偽表示

相手方と通じてした虚偽の意思表示を、虚偽表示という。 

第94条 相手方と通じてした虚偽の意思表示は、無効とする。

2 前項の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

・第三者が保護されるためには、善意であればよく、無過失は要求されない。

・第三者が保護されるためには、登記も必要ない。

 

【第三者とは】

虚偽表示の当事者及びその包括承継人以外の者であって、虚偽表示によって生じた法律関係について、別の法律原因によって新たな利害関係を有するに至った者

→虚偽表示の当事者の相続人は第三者に該当しない。

 

【第三者に該当するケース】

・虚偽表示による譲受人から目的物を譲り受けた者

・虚偽表示により債権を取得した者から、その仮装債権を譲り受けた者

・虚偽表示の譲受人の債権者で、その目的物を差し押さえた者

→虚偽表示の譲受人の一般債権者は該当しない。

・虚偽表示による譲受人から、抵当権の設定を受けた者

 など

 

【第三者からの転得者】

悪意の第三者からの転得者が善意の場合

→転得者は保護される(最判昭45.7.24)

 

善意の第三者からの転得者が悪意の場合

→転得者は保護される(大判昭6.10.24)

※学説は分かれる

 

【まとめ】

①虚偽表示による意思表示の効果

原則 無効

②第三者の保護要件

善意であること

 

 

④錯誤

錯誤とは、表意者が内心と異なる表示を気付かずにすることである。

法律行為の重要な部分について、表意者の真意と意思表示が異なること。 

【改正前】

第95条 意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。

【改正後】

第95条 意思表示は、次に掲げる錯誤に基づくものであって、その錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるときは、取り消すことができる

一 意思表示に対応する意思を欠く錯誤

二 表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤

 

2 前項第二号の規定による意思表示の取消しは、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り、することができる。

 

3 錯誤が表意者の重大な過失によるものであった場合には、次に掲げる場合を除き、第一項の規定による意思表示の取消しをすることができない。

一 相手方が表意者に錯語があることを知り、又は重大な過失によって知らなかったとき。

二 相手方が表意者と同一の錯誤に陥っていたとき

 

4 第一項の規定による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

【主な改正点】

・錯誤による意思表示の効果が、「無効」から「取り消すことができる」に変更された

・「要素の錯誤」について具体化された

・動機の錯誤が明文化された

 

【取り消すための要件】

①錯誤が、法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なものであること

→その錯誤がなかったら、表意者だけでなく、普通の人でもその意思表示をしなかったであろうと思われる程度の重要な部分に錯誤があること。

②錯誤が表意者の重大な過失によるものではないこと

→表意者の重大な過失による錯誤の場合

以下の場合に限り意思表示の取消しをすることができる。

A相手方が、表意者の錯誤について悪意・重過失である。(双方重過失)

B相手方が、表意者と同一の錯誤に陥っていた。(共通錯誤)

 

【錯誤の態様】

表示錯誤

→意思表示に対応する意思を欠く錯誤

 

動機錯誤

→表意者が法律行為の基礎とした事情についてその認識が真実に反する錯誤。

 

その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていたときに限り

その意思表示を取り消すことができる

  

【まとめ】

①錯誤による意思表示の効果

原則 取り消すことができる

例外 取り消すことができない(表意者に重大な過失がある場合)

②第三者の保護要件

善意無過失であること

 

 

⑤詐欺

詐欺とは人をだまして意思表示させることである。 

第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

 

【取り消すための要件】

①詐欺の故意があること

→欺罔行為により錯誤に陥らせ、その錯誤に基づいて意思表示させようとする二段の故意が必要

②欺罔行為があること

③その欺罔行為によって相手方に錯誤が生じたこと

 

【第三者詐欺】

第三者による詐欺とは、当事者以外の第三者によって本人が錯誤に陥ること。

【改正前】

第96条

2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

【改正後】

第96条

2 相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。

意思表示の取消しの要件が、相手方の悪意から、相手方の悪意又は有過失に変更された。

 

【第三者の保護要件】

【改正前】

第96条

3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。

【改正後】

第96条

3 前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意でかつ過失がない第三者に対抗することができない。

 

 【第三者とは】

虚偽表示と同様に、詐欺による法律行為を前提として、新たに独立した法律上の利害関係を有するに至った者のこと

 

【まとめ】

①詐欺による意思表示の効果

原則 取り消すことができる

②第三者の保護要件

善意無過失であること

 

 

⑥強迫

 強迫とは、不法に害悪を告知することにより相手方を畏怖させ、意思表示をさせること。

第96条 詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。

→完全に意思の自由を奪われて意思表示した場合は、その意思表示は当然に無効である。

 ・強迫による意思表示は、善意無過失の第三者に対しても対抗できる。

 

 

⑦意思表示の効力発生時期

第97条 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。

→ 原則として、到達主義を採用している。具体的には、相手方が直接受領しなくても、相手方の勢力圏内に入れば到達したことになる。

→ 例外的に、催告に対する制限行為能力者の確答発信主義が採用される。

 

【改正】(※新設)

第97条

2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす

 

 第97条

3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。 

 

 

⑧意思表示の受領能力

意思表示の受領能力とは、意思表示の内容を了知できる能力である。

【改正前】

第98条の2 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。  

→ 未成年者・成年被後見人には意思表示の受領能力がなく、これらの者の法定代理人が知った時は、意思表示があったことを対抗できるとされていた。

 

【改正後】

第98条の2 意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に意思能力を有しなかったとき又は未成年者若しくは成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、次に掲げ得る者がその意思表示を知った後は、この限りでない。

一 相手方の法定代理人

二 意思能力を回復し、又は行為能力者となった相手方 

→ 未成年者・成年被後見人に加えて意思無能力者も意思表示の受領能力がないと明文化された。さらに、法定代理人が知ったときだけでなく、相手方が意思能力や行為能力を回復した後に知った時は、意思表示があったことを対抗できると変更された。