今日は事実婚である「内縁」についてまとめてみました。
1.内縁
婚姻と似ているものに内縁があります。
婚姻意思をもって共同生活を営み、社会的に夫婦と認められている関係のことです。
婚姻届を提出していないため、法的には夫婦と認められていない事実上の夫婦関係のことです。
内縁の法的性質・・・準婚関係
事実上の夫婦の一方が他方の意思に基づかないで婚姻届を作成し、提出した場合においても、婚姻は他方の配偶者の追認により届出の当初に遡って有効となる。(最判昭47.7.25)
AB間に婚姻届出の合意があれば、その合意の効果として、当事者は婚姻届出をして法律上の婚姻を成立させる義務を負う。しかし婚姻をするかどうかは、最終的には当事者の自由な意思に委ねられるべき事柄であるから、当事者の一方が届出に協力しない時でも、間接強制や判決をもって当事者の意思表示に代えるなどその履行を強制することはできない。(大連判大4.1.26)
内縁と、婚姻の違いはどんなところで影響するでしょうか?
内縁は婚姻に準ずる準婚関係ですので、できるだけ婚姻の効果に関する民法の規定を内縁にも準用しようというのが判例の通説です。
以下の点は、婚姻と変わらない効果があります。
①夫婦の同居・協力・扶助義務が生じる
②貞操義務がある
③婚姻費用を分担する必要がある
④日常家事債務について連帯で責任を負う
⑤帰属不明財産は、当事者双方の共有であると推定される
⑥離婚の際、財産分与を請求できる
以下の点で、婚姻と異なります。
戸籍と結びつき、一律に効果を定めなければならない事項については準用されないのです。
①姻族関係は発生しない
②夫婦同氏にならない
③成年擬制は認められない(内縁関係になっても、成年になったとみなすことはできない)
④嫡出の推定がされない
⑤相続権がない
判例が内縁関係を準婚関係と認め、婚姻の効果に対する諸規定の準用を認めるのは、内縁関係が夫婦共同生活としての実質を有するからである。すなわち、婚姻の効果に関する規定のうち、夫婦共同生活の実態を前提とする効果については広く内縁関係に準用されてもよい。
夫婦共同生活を営むために建物を賃借した場合の賃料債務は、夫婦の日常の家事に関する法律行為によって生じた債務にあたるが、それは夫婦共同生活の実態を前提とするものであるから、内縁関係にも準用される。(大阪地判昭27.9.27)
財産分与に関する規定も、夫婦共同生活の実態を前提とする規定であるから、内縁関係にも当該規定は準用される。(広島高決昭38.6.19)
内縁の夫婦がその共有する不動産を居住または共同事業のために共同で使用してきたときは、特段の事情がない限り、両者の間において、その一方が死亡した後は他方が当該不動産を単独で使用する旨の合意が成立していたものと推定される。(最判平10.2.26)
内縁夫婦の関係および共同不動産の使用状況からすると、一方が死亡した場合に残された内縁の配偶者に共有不動産の全面的な使用権を与えて、従前と同一の目的、態様の不動産の無償使用を継続させることが両者の通常の意思に合致するといえるからである。
2.内縁の解消
内縁を解消も、婚姻の解消と同じく2つのパターンが原因となります。
①当事者の意思による解消
協議により内縁関係を解消することができます。
この場合、財産分与の請求をすることができます。
協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができる。そして離婚に伴う財産分与の規定は、離別による内縁解消の場合にも準用ないし類推適用される。(最決平12.3.10)
②一方の死亡による解消
内縁関係の当事者の一方が死亡した場合、当然に内縁関係が解消されます。
この場合、相続権が認められません。
さらに、婚姻の解消の財産分与の規定を類推適用することもできません。
つまり、法的に夫婦として届出をしていないと、突然亡くなってしまった後の財産上の条件が厳しいものとなります。
ただし、他に相続人がいない場合は、特別縁故者として相続財産分与される余地はあります。
特別縁故者とは?
被相続人に相続人となるべきものがいないときは、①生計を同じくしていた者②療養監護に努めたもの③その他特別の縁故にあったものに対して、その者の申立てにより、裁判所は審判で残余財産の全部または一部を与えることができるという規定があります。(958条の3)
内縁の夫婦の一方の死亡により内縁関係が解消した場合に、民法768条の規定を類推適用することはできない。内縁の夫婦について、離別による内縁解消の場合に民法の財産分与の規定を類推適用することは、準婚的法律関係の保護に適するものとしてその合理性が認められ得るが、死亡による内縁解消のときに相続の開始した遺産につき財産分与の法理による遺産清算の道をひらくことは、相続による財産承継の構造の中に異質の契機を持ち込むもので、法の予定しないところだからである。(最決平12.3.10)
判例は内縁の本質を準婚関係と解する立場から、内縁配偶者の一方の親族が内縁関係に不当に干渉して破綻させた場合には、他方配偶者は当該親族及びこれに共同加効した相手方に対し、連帯して損害を賠償するよう請求することを認めています。(最判昭38.2.1)
以上、内縁と内縁の解消についてまとめてみました。
実際に婚姻届けを出すかださないかで、いろいろな違いがでることがわかりました!
お付き合いいただきありがとうございました( ^ω^ )