①商業登記の目的
商業登記法第1条 この法律は、商法(明治32年法律第48号)、会社法(平成17年法律第86号)その他の法律の規定により登記すべき事項を公示するための登記に関する制度について定めることにより、商号、会社等に係る信用の維持を図り、かつ、取引の安全と円滑に資することを目的とする。
②不動産登記との違い
不動産登記・・・主に民法177条の対抗要件を備え権利を保全するためのもの
商業登記・・・会社等の必要事項を公示することにより取引を安全・円滑にするためのもの
③商業登記の効力
会社法第908条 この法律の規定により登記すべき事項は、登記の後でなければ、これをもって善意の第三者に対抗することができない。登記の後であっても、第三者が正当な事由によってその登記があることを知らなかったときは、同様とする。
2 故意または過失によって不実の登記をした者は、その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。
・登記の前でも、悪意の第三者に対しては対抗できる
【908条2項が類推適用されるケース】
①不実の登記をすることを承諾していた場合
②不実の登記があることを知りながら放置した場合
④当事者申請主義
第14条 登記は、法令に別段の定めがある場合を除くほか、当事者の申請又は官庁の嘱託がなければ、することができない。
原則 登記は当事者の申請・官公署の嘱託による。
例外 登記官の職権による登記ができる場合がある。
⑤商業登記の申請書の記載事項
第17条
2 申請書には、次の事項を記載し、申請人又はその代表者(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者)若しくは代理人が記名押印しなければならない。
一 申請人の氏名及び住所、申請人が会社であるときは、その商号及び本店並びに代表者の氏名又は名称及び住所(当該代表者が法人である場合にあつては、その職務を行うべき者の氏名及び住所を含む。)
二 代理人によつて申請するときは、その氏名及び住所
三 登記の事由
四 登記すべき事項
五 登記すべき事項につき官庁の許可を要するときは、許可書の到達した年月日
六 登録免許税の額及びこれにつき課税標準の金額があるときは、その金額
七 年月日
八 登記所の表示
商業登記規則第35条
2 申請書に記載すべき登記事項は、区ごとに整理して記載するものとする。
⑥添付書類について
A添付書類の還付
商業登記規則第49条
2 書類の還付を請求するには、登記の申請書に当該書類と相違がない旨を記載した謄本をも添付しなければならない。
商業登記規則第49条
4 代理人によつて1項の請求(添付書類の還付請求)をするには、申請書にその権限を証する書面を添付しなければならない。
B登記事項証明書の添付の省略
19条の3 この法律の規定により登記の申請書に添付しなければならないとされている登記事項証明書は、申請書に会社法人等番号を記載した場合その他の法務省令で定める場合には、添付することを要しない。
⑦支店の所在地における登記
会社法第930条 次の各号に掲げる場合(当該各号に規定する支店が本店の所在地を管轄する登記所の管轄区域内にある場合を除く。)には、当該各号に定める期間内に、当該支店の所在地において、支店の所在地における登記をしなければならない。(略)
第17条
3 会社の支店の所在地においてする登記の申請書には、その支店をも記載しなければならない。
・支店が同じ管轄内に複数ある場合は、一つだけ記載すればよい
【登記事項】
会社法第930条
2 支店の所在地における登記においては、次に掲げる事項を登記しなければならない。ただし、支店の所在地を管轄する登記所の管轄区域内に新たに支店を設けたときは、第三号に掲げる事項を登記すれば足りる。
一 商号
二 本店の所在場所
三 支店(その所在地を管轄する登記所の管轄区域内にあるものに限る。)の所在場所
3 前項各号に掲げる事項に変更が生じたときは、三週間以内に、当該支店の所在地において、変更の登記をしなければならない。
・支店の所在地において印鑑の提出は不要
・申請書への記名押印は必要
【添付書類】
第48条 本店及び支店の所在地において登記すべき事項について支店の所在地においてする登記の申請書には、本店の所在地においてした登記を証する書面(登記事項証明書)を添付しなければならない。この場合においては、他の書面の添付を要しない。
・登記事項証明書のみ添付。委任状も不要。
【本支店一括申請】
「法務大臣の指定する登記所の管轄区内に本店を有する会社」の支店が「法務大臣の指定する他の登記所の管轄区域内にあるとき」は、本店の所在地を管轄する登記所を経由して登記申請することができる。(49条)
※管轄が異なるにもかかわらず、一括申請できる。
※同一書面で申請することになる。