ブログ 七転び八起き

司法書士試験合格までの9年間を綴ったブログです。

八回目で念願の司法書士試験合格

【不動産登記法】根抵当権の設定・移転(元本確定前)

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1根抵当権

①根抵当権と法的性質

【根抵当権とは】

一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額を限度として担保する抵当権

民法398条の2 抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

 

【根抵当権の法的性質】

A元本が確定するまで、付従性が否定される

→現実に被担保債権が存在している必要がない

B元本が確定するまで、随伴性が否定される

→債権の範囲に属する債権が、第三者に譲渡されても、根抵当権は移転しない

 

 

②根抵当権設定の絶対的登記事項

根抵当権設定の登記申請をする場合は、一般的な申請情報の他に特殊的な申請情報の内容を提供する必要がある。

(不動産登記令別表56申請情報欄イロ)

 

絶対的登記事項は、必ず提供しなければならない。

A極度額(邦貨で定める)

B債権の範囲

民法398条の2

2 前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。

3 特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権、手形上若しくは小切手上の請求権又は電子記録債権(中略)は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

債権者との特定の継続的取引契約によって生ずる債権

・債務者との一定の種類の取引によって生ずる債権

〇「売買取引」「銀行取引」「保証委託取引」

✖「商社取引」「問屋取引」「準消費貸借取引」

 →限定性・客観的明確性が必要

・(取引以外で)特定の原因に基づき債務者との間で継続的に生ずる債権

〇「A工場の廃液による損害賠償請求権」

✖「債務者の不法行為による損害賠償請求権」

・特定債権

他の一定の範囲に属する不特定の債権とともに担保する場合に限る

C債務者

・債務者が数人いる場合でも、連帯債務者と提供することはできない。

 

 

③根抵当権設定の任意的登記事項

任意的記載事項は定めがある場合にのみ提供を要する。

A元本の確定期日

・確定期日は、設定・変更の日から5年以内の日であること

・5年を超えると無効

・特定の日付を記載する必要があり、「契約日から〇年」という記載はできない

B民法370条ただし書の別段の定め

C優先の定め

・優先の定めは設定登記の申請情報の内容として提供することはできない

設定登記と優先の定めの登記は一の申請情報で申請することはできない

 

 

④根抵当権設定の登録免許税

極度額×1000分の4

 

 

⑤根抵当権設定の添付情報

A登記原因証明情報

B登記識別情報

C印鑑証明書

D代理権限証明情報

 

 

2共有根抵当権

①共有根抵当権とは

【共有根抵当権】

一個の根抵当権を数人が準共有すること。

 

 

②共有根抵当権の設定登記

・通常の根抵当権設定の登記申請と同じ

根抵当権者ごとに債権の範囲や債務者が異なる時は、根抵当権者ごとに特定して提供する

元本が確定する前は持分の概念がないので、持分の提供を要しない

 

 

 

3共同根抵当権

①累積根抵当権と共同根抵当権

【純粋共同根抵当権】

民法398の16 第392条及び第393条(共同抵当)の規定は、根抵当権については、その設定と同時に同一の債権の担保として数個の不動産につき根抵当権が設定された旨の登記をした場合に限り、適用する。

 

【累積根抵当権】

民法398条の18 数個の不動産につき根抵当権を有する者は、第398条の16の場合を除き、各不動産の代価について、各極度額に至るまで優先権を行使することができる。

 ・累積根抵当権を共同根抵当権に変更(更正)すること→不可

 ・共同根抵当権を累積根抵当権に変更(更正)すること→不可

 

 

②共同根抵当権の成立要件

A同一の債権を担保する根抵当権であること

すべての抵当権について、絶対的登記事項(極度額・債権の範囲・債務者)が同一であること

・優先の定め・元本の確定期日については、各不動産で異なっていてもよい

 

B設定と同時に共同担保である旨の登記をすること

・「共同担保である旨の登記」とは登記の目的に「共同根抵当権設定」と記載することを指す

【一の申請情報(同一の管轄内)による申請の可否】

〇共同根抵当権設定

✖累積根抵当権設定

 

 

③共同根抵当権の追加設定

異なる管轄の二つの土地に共同根抵当権を設定する場合も追加設定の形をとる

B【追加設定の可否】

・✖片面的共同担保として、共同根抵当権の追加設定をする

・✖累積根抵当権と同一の債権を担保する為に、共同根抵当権の追加設定をする

・✖元本確定後の根抵当権に、共同根抵当権の追加設定をする

C【追加設定の要件

既登記の根抵当権と登記事項(極度額・債権の範囲・債務者)が一致している必要がある

→債務者の氏名も完璧に一致していること

・債務者の住所に変更が生じていたら、前提としての名変登記が必要

・地番変更を伴わない行政区画の変更の場合は名変登記は不要

・確定期日の定め・優先の定め・民法370条ただし書の定めについては不動産ごとに異なっていてもよい

 

 

④共同根抵当権の追加設定の登記

【申請情報の内容】

A登記の目的・・・「共同根抵当権設定(追加)」

B原因・・・「年月日設定」

C極度額

D債権の範囲

E債務者

F根抵当権者

G設定者

H前に受けた登記の表示

・既に根抵当権の登記がされている不動産の表示

・当該根抵当権の順位番号

・共同担保目録がある場合は、その記号・目録番号

 ※共同担保目録を記載しても、不動産の表示・順位番号の省略は不可

 

⑤共同根抵当権の追加設定の登記の添付情報

A登記原因証明情報

B登記識別情報

C印鑑証明書

D代理権限証明情報

前登記証明書

・既に登記された根抵当権に関する登記事項証明書を提供する

→管轄が異なる場合にのみ必要

・提供すると、登録免許税が減税される

→1500円(不動産1個につき)

 

4元本確定前の根抵当権の移転

①全部譲渡

民法398条の12 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権を譲り渡すことができる。

・元本確定前であること

・根抵当権設定者の承諾を得ること

・根抵当権譲渡人と譲受人の共同申請

 

【申請情報の内容】

A登記の目的・・・「〇番根抵当権移転」

B原因・・・「年月日譲渡」

 

【添付情報】

 A登記原因証明情報

B登記識別情報

設定者の承諾を証する情報

D代理権限証明情報

 

【登録免許税】

極度額×1000分の2

 

 

②分割譲渡

民法第398条の12

2 根抵当権者は、その根抵当権を2個の根抵当権に分割して、その一方を前項の規定により譲り渡すことができる。この場合において、その根抵当権を目的とする権利は、譲り渡した根抵当権において消滅する。

3 前項の規定による譲渡をするには、その根抵当権を目的とする権利を有する者の承諾を得なければならない。

・元本確定前であること

・設定者の承諾を得ること

・当該根抵当権を目的として権利を有する第三者がいるときは、その者の承諾を得ること

・ABが準共有する根抵当権につき、分割譲渡により直ちにAとBの単有とする二つの根抵当権とすることはできない

・根抵当権を分割譲渡により3つに分割することはできない

 

【申請情報の内容】

A登記の目的・・・「〇番根抵当権分割譲渡

B原因・・・「年月日分割譲渡

Cその他・・・特殊的な登記事項

・根抵当権設定の登記の申請の受付年月日・受付番号

・根抵当権設定の登記の登記原因と日付

・譲渡される極度額(分割後の原根抵当権の極度額)

・分割前の根抵当権の債権の範囲・債務者・その他

・分割前の根抵当権の共同担保目録

 

【添付情報】

A登記原因証明情報

B登記識別情報

設定者の承諾を証する情報

利害関係人(転抵当権者等)の承諾を証する情報

E代理権限証明情報

 

【登録免許税】

譲渡された極度額×1000分の2

 

【注意事項】

・分割譲渡の登記は、原根抵当権と同一の順位番号を用いた主登記でされる

・原抵当権の減少した極度額は、職権により変更される

 

 

③一部譲渡

民法第398条の13 元本の確定前においては、根抵当権者は、根抵当権設定者の承諾を得て、その根抵当権の一部譲渡(譲渡人が譲受人と根抵当権を共有するため、これを分割しないで譲り渡すことをいう。以下この節において同じ。)をすることができる。

・元本確定前

・譲受人と譲渡人の共有根抵当権となる

・設定者の承諾を要する

 

【申請情報の内容】

A登記の目的・・・「〇番根抵当権一部移転」

B原因・・・「年月日一部譲渡」

 

【添付情報】

A登記原因証明情報

B登記識別情報

設定者の承諾を証する情報

D代理権限証明情報

 

【登録免許税】

極度額を一部譲渡後の根抵当権の共有者の数で割った額×1000分の2

 

【注意点】

・準共有となるが、登記権利者について取得した持分の表示を提供する必要はない

・【ABで準共有している根抵当権の移転の可否】

〇ABがともにCに対して全部譲渡・一部譲渡・分割譲渡する

〇ABのうちAがCに対して全部譲渡する

(共有者の権利の譲渡(後述)となる)

✖ABのうちAがCに対して一部譲渡・分割譲渡する

(法律関係が複雑になるのを避けるため)

 

 

④共有者の権利の譲渡

民法第398条の14 

2 根抵当権の共有者は、他の共有者の同意を得て、第398条の12第1項の規定によりその権利を譲り渡すことができる。

・元本確定前であること

・設定者の承諾を要する

・他の共有者の同意を要する

 

【申請情報の内容】

A登記の目的・・・「〇番根抵当権共有者何某の権利移転

B原因・・・「年月日譲渡

 

【添付情報】

A登記原因証明情報

B登記識別情報

設定者の承諾を証する情報

他の共有者の同意を証する情報

E代理権限証明情報

 

【登録免許税】

極度額を譲渡前の共有者の数で割った額×1000分の2

 

 

⑤共有者の権利の放棄

民法第255条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は他の共有者に帰属する。

・元本確定前であること

・設定者の承諾は不要

・他の共有者の同意は不要

 

【申請情報の内容】

A登記の目的・・・「〇番根抵当権共有者何某の権利移転」譲渡も放棄も同じ

B原因・・・「年月日放棄

 

【添付情報】

A登記原因証明情報

B登記識別情報

 

 

【登録免許税】

極度額を放棄前の共有者の数で割った額×1000分の2

 

※根抵当権の元本確定前の移転の登記原因日付について

①根抵当権の譲渡等の契約日

②根抵当権の設定者の承諾を得た日

③利害関係人や他の共有者等の同意を得た日(必要な場合)

①~③の日付のうち、最も遅い日付となることに注意する。