会社総則
①会社の性質
営利性と社団性をもつ法人である。
②会社の種類
株式会社と持分会社の2種類。
持分会社は更に合名会社・合資会社・合同会社に分けられる。
③社員
会社に出資し、会社を構成する者を社員という。
④会社に共通の事項(3条~24条)
・商行為
第5条 会社(中略)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は、商行為とする。
・商号(自然人の氏名にあたる)
第6条 会社は、その名称を商号とする。
2 会社は、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の種類に従い、それぞれの商号中に株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社という文字を用いなければならない。
3 会社は、その商号中に、他の種類の会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
第7条 会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。
第8条 何人も、不正の目的をもって、他の会社であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない。
2 前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある会社は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
・本店(自然人の住所にあたる)
第4条 会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする。
本店の他に支店を設けることがでできる。
・支配人
第10条 会社(外国会社を含む。以下この編において同じ。)は、支配人を選任し、その本店又は支店において、その事業を行わせることができる。
第11条 支配人は、会社に代わってその事業に関する一切の裁判上または裁判外の行為をする権限を有する。
2 支配人は、他の使用人を選任し、または解任することができる。
3 支配人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
→ 支配人の権限の範囲は、特定の本店・支店に限られている。
第12条 支配人は、会社の許可を受けなければ、次に掲げる行為をしてはならない。
一 自ら営業を行うこと。
二 自己又は第三者のために会社の事業の部類に属する取引をすること。
三 他の会社又は商人(中略)の使用人となること。
四 他の会社の取締役、執行役又は業務を執行する社員となること。
2 支配人が前項の規定に違反して同項第2号に掲げる行為をしたときは、当該行為によって支配人又は第三者が得た利益の額は、会社に生じた損害の額と推定する。
第13条 会社の本店又は支店の事業の主任者であることを示す名称を付した使用人は、当該本店又は支店の事業に関し、一切の裁判外の行為をする権限を有するとみなす。ただし、相手が悪意であったときは、この限りでない。
株式会社
①株主とは
株式会社に出資した、実質的な株式会社の所有者のこと。
第104条 株主の責任は、その有する株式の引受価額を限度とする。
→ 株主有限責任の原則という。
②定款
法人の基本的な規則、またはその内容を記載したもの。
A絶対的記載事項(27条)
以下を定款で定めなければ、定款自体が無効となる。
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所
・発行可能株式総数(37条1項)
発行可能株式総数は、原始定款に記載する必要はないが、株式会社成立の時までに必ず定めておく必要があるので、定款の絶対的記載事項に準ずるものといえる。
B相対的記載事項
定めても定めなくてもよいが、定めるときは必ず定款で定めなければならない事項
C任意的記載事項
定款で定めてもよいし、定款で定めなくてもよい事項
③機関
・必ず設置すべき機関
株主総会と取締役
・設置することができる機関
取締役会
会計参与
監査役
監査役会
会計監査人
監査等委員会
指名委員会等
これらの機関は一定の場合に設置が義務づけられており、設置する場合は定款で定めなければならない。
第326条
2 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。
・取締役会を設置しなければならない会社
第327条 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。
一 公開会社
二 監査役会設置会社
三 監査等委員会設置会社
四 指名委員会等設置会社
※公開会社は常に取締役会設置会社。
上場するためには、経営者個人の個性より、組織として安定した経営のできる企業である必要があるため、取締役会の設置が必要。
・監査役とは
第381条 監査役は、取締役(会計参与設置会社にあっては、取締役及び会計参与)の職務の執行を監査する。(略)
・監査役を設置しなければならない会社
第327条
2 取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社についてはこの限りではない。
3 会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
※取締役会設置会社(公開会社)は、監査役を設置しなければならない。
公開会社は一般投資家が存在するので、取締役の業務執行を監査する機関が必要。
※取締役会設置会社(非公開会社)は、監査役か会計参与のどちらかを置かなければならない。
※会計監査人設置会社は監査役を設置しなければならない。
(監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社には監査役を設置できない。)
・監査役の監査の範囲の限定
第389条 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第381条第1項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に限定する旨を定款で定めることができる。
監査役設置会社の定義からは、監査役の監査の範囲を定款で限定している株式会社が除外されている。
・監査役会を設置しなければならない会社
第328条 大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。
2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。
※大会社かつ公開会社→ 監査役会が必置
※大会社→ 公開・非公開に関わらず、会計監査人が必置
(監査等委員会設置会社・指名委員会等設置会社の場合を除く)
④公開会社とは
第2条
五 公開会社 その発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう。
株式の全部が譲渡制限株式である株式会社以外の株式会社は公開会社である。
⑤大会社とは
第2条
六 大会社 次に掲げる要件のいずれかに該当する株式会社をいう。
イ 最終事業年度に係る貸借対照表(中略)に資本金として計上した額が五億円以上であること。
ロ 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が二百億円以上であること。
株主総会
①株主総会の権限
第295条 株主総会は、この法律に規定する事項及び株式会社の組織、運営、管理その他株式会社に関する一切の事項について決議をすることができる。
2 前項の規定にかかわらず、取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議することができる。
②株主総会の種類
・定時株主総会(296条1項)
・臨時株主総会(296条2項)
③株主総会の招集
A取締役による招集
第296条
3 株主総会は、次条第4項の規定により招集する場合を除き、取締役が招集する。
【招集の決定】(298条)
・取締役会設置会社・・・招集の決定は取締役会
・非取締役会設置会社・・・招集の決定は取締役
・招集する際の決定事項(298条1項)
【招集の通知方法】(299条)
・公開会社→2週間前まで(書面で)
・非公開会社かつ取締役会設置会社→1週間前まで(書面で)
・非取締役会設置会社→原則1週間前までだが、定款で短縮可能(○口頭)
※書面・電磁的方法による議決権行使ができる場合→2週間前まで(書面で)
【通知の省略】(300条)
・株主全員の同意があれば可能
・書面・電磁的方法による議決権行使を認めた場合、招集通知の省略は不可
B株主による招集
・一定の要件を満たす株主は、株主総会の招集を取締役に請求できる。(297条1項~3項)
・297条1項の請求をした株主自身が株主総会の招集できる場合がある。(297条4項)
④議決権とは
第308条 株主(中略)は、株主総会において、その有する株式1株につき1個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき1個の議決権を有する。
2 前項の規定にかかわらず、株式会社は、自己株式については、議決権を有しない。
【議決権数】
原則
1株につき議決権数は1個
例外
①自己株式
②相互保有株式(相互に4分の1以上有している場合)
③単元未満株式
④議決権制限付株式
【議決権の行使】
代理人による議決権行使(310条)
・代理人の数の制限
・代理人の資格の制限・・・資格を株主に限定する
議決権の不統一行使(313条)
・取締役会設置会社・・・3日前までに通知が必要
⑤決議要件
A普通決議(309条1項)
定足数→議決権を行使できる株主の議決権の過半数
賛成数→出席した株主の議決権の過半数
※定款で別段の定めを置くことができる。定足数の排除も可能。
B特別決議(309条2項)
定足数→議決権を行使できる株主の議決権の過半数
賛成数→出席した株主の議決権の3分の2以上
※定款で定足数を3分の1以上の割合にすることもできる。
賛成数を厳しくすることもできる。
C特殊決議(309条3項)
定足数→なし
賛成数→議決権を行使することができる株主の半数以上、議決権を行使することができる株主の議決権の3分の2以上
※定款で要件を厳しくできる。
D特殊決議(309条4項)
定足数→なし
賛成数→総株主の半数以上、総株主の議決権の4分の3以上
※定款で要件を厳しくできる。
E株主総会の決議の省略(319条)
⑥株主総会議事録
第318条 株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。
・ 株主総会議事録は、本店に10年・支店に5年備えおく必要がある。(318条2項・3項)
・【閲覧請求権者】
①株主
②会社債権者
③親会社社員(裁判所の許可)
⑦株主の権利
A議題の提案権(議案の要領の通知請求権)(303条・305条)
B議案の提出権(304条)
C検査役の選任(306条)
D調査する者の選任(316条)
⑧株主総会決議に瑕疵があるとき
A決議無効確認の訴え(830条2項)
→決議内容が法令違反の場合
B決議不存在確認の訴え(830条1項)
→株主総会の開催を認められないほど瑕疵がひどい場合
C決議取消しの訴え(831条)
→決議内容が定款違反の場合
→手続が法令・定款違反の場合
→特別の利害関係を有するものが議決権行使したことによる著しく不当な決議がされた場合
【特徴】
・株主総会の決議の日から3ヶ月以内に提訴する
・提訴権者が限られる
・裁判所は場合によって裁量棄却できる