裁判所
①受命裁判官・受託裁判官
受命裁判官・・・受訴裁判所の構成員で委任を受けた裁判官
受託裁判官・・・他の裁判所に嘱託した場合にその処理をする裁判官
②国際裁判管轄
日本の裁判所が民事裁判権を持つかどうかの判断基準となる。
・人の住所等による管轄権(3条の2・1項)
・契約上の債務に関する訴え等の管轄権(3条の3)
・消費者契約に関する訴えの管轄権(3条の4)
・労働関係に関する訴えの管轄権(3条の4)
③管轄
専属管轄の違背・・・控訴・上告の理由となる(再審事由ではない)
任意管轄の違背・・・控訴審で主張できない
・事物管轄(簡易裁判所か地方裁判所か)
簡易裁判所・・・訴額140万円を超えない事件
地方裁判所・・・訴額140万円を超える事件・不動産に関する事件
・訴額が140万を超えない不動産に関する事件→簡裁と地裁が競合
・訴額を算定できないとき→地方裁判所
第9条 一の訴えで数個の請求をする場合には、その価額を合算したものを訴訟の目的の価額とする。ただし、その訴えで主張する利益が各請求について共通である場合におけるその各請求については、この限りでない。
2 果実、損害賠償、違約金又は費用の請求が訴訟の附帯の目的であるときは、その価額は、訴訟の目的の価額に算入しない。
・土地管轄
A普通裁判籍
事件の種類に関係なく常に認められる裁判籍
第4条 訴えは、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属する。
2 人の普通裁判籍は、住所により、日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所により、日本国内に居所がないとき又は居所が知れないときは最後の住所により定まる。
B特別裁判籍(独立裁判籍・関連裁判籍)
特定の種類の事件について認められる裁判籍
【独立裁判籍 】
①財産上の訴え→義務履行地
②手形・小切手による支払い請求→支払地 ×振出地
③日本に住所がない者への財産上の訴え→財産の所在地
④事務所・営業所を有する者への訴え→事務所・営業所の所在地
⑤不法行為に関する訴え→不法行為があった地
⑥不動産に関する訴え→不動産の所在地
⑦登記・登録に関する訴え→登記・登録をすべき地
⑧相続・遺留分・遺贈等に関する訴え→相続開始時における被相続人の普通裁判籍の所在地
【関連裁判籍】
第7条 一の訴えで数個の請求をする場合には、第4条から前条まで(第6条3項を除く。)の規定により一の請求について管轄権を有する裁判所にその訴えを提起することができる。ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第38条前段に定める場合に限る。
前段の意味(訴えの客観的併合の管轄)
当事者が同一で、請求が複数あるケース
→そのうち一つの請求についてだけ管轄権がある裁判所に訴えを提起できる。
ただし書の意味(訴えの主観的併合の管轄)
当事者が複数のケース
→訴訟の目的である権利または義務が数人について共通であるとき、または同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき(38条前段に定める場合)は、そのうち一つの請求についてだけ管轄権がある裁判所に訴えを提起できる。
・合意管轄
第11条 当事者は、第一審に限り、合意により管轄裁判所を定めることができる。
2 前項の合意は、一定の法律関係に基づく訴えに関し、かつ、書面でしなければ、その効力を生じない。
第一審に限る。
専属管轄がない場合に限る。
事物管轄・土地管轄いずれについての合意でもよい。
一定の法律関係に基づく訴えに関するものに限る。
書面でしなければならない。
・応訴管轄
第12条 被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、または弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。
※準備書面を提出しただけでは応訴管轄は生じない。
※本案についての弁論をした場合に限る。
・管轄の基準時
第15条 裁判所の管轄は、訴え提起の時を標準として定める。
・管轄権の調査
第14条 裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。
④移送
・管轄違いによる移送(16条)
・遅滞を避けるため等の移送(17条)
・簡易裁判所から地方裁判所への裁量移送(18条)
・同意による必要的移送(19条1項)
・不動産に関する訴訟の必要的移送(19条2項)
・反訴提起による必要的移送(274条1項)
第21条 移送の決定及び移送の申立てを却下した決定に対しては、即時抗告をすることができる。
※反訴提起による必要的移送の決定に対しては、不服申立をすることは不可
第22条 確定した移送の裁判は、移送を受けた裁判所を拘束する。
2 移送を受けた裁判所は、更に事件を他の裁判所に移送することができない。
3 移送の裁判が確定したときは、訴訟は、初めから移送を受けた裁判所に係属していたものとみなす。
移送原因となった事由と別個の事由による再移送は可能(東京地決昭61.1.14)
訴訟当事者
①当事者とは
自己の名前で訴えを提起し、または相手方として訴えが提起されることによって、判決の名宛人となる者のことである。
②当事者能力
・当事者能力を有する者は、実体法上(民法上)、権利能力を有する者(自然人・法人)である。(28条)
・権利能力を有しない社団等も当事者能力が認められる。
第29条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
③訴訟能力
訴訟能力とは、訴訟の当事者となり自ら訴訟行為をし、または相手方や裁判所の訴訟行為を受けるために必要な能力をいう。
訴訟能力を有する者は、実体法上(民法上)、行為能力を有する者である。(28条)
第31条 未成年者及び被成年後見人は、法定代理人によらなければ、訴訟をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りではない。
【未成年者・成年被後見人】
・法律行為(民法)・・・同意を得ない法律行為は取消すことができる。
・訴訟行為(民事訴訟法)・・・法定代理人の同意を得ても単独ですることができない。これらの者の訴訟行為は無効とされる。
ただし、成年擬制や営業の許可を得た場合など、独立して法律行為をすることができる場合は、未成年者もその範囲内で訴訟能力を有する。
【被保佐人・被補助人】
・訴訟行為→保佐人・補助人の同意が必要。
・応訴→保佐人・補助人の同意は不要。
・訴訟中に保佐・補助開始の審判を受けた→その審級に限り保佐人・補助人の同意は不要
・特別の授権が必要な場合(32条2項)
【訴訟能力を欠く場合】
第34条 訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠くときは、裁判所は、期間を定めて、その補正を命じなければならない。この場合において、遅滞のため損害を生ずるおそれがあるときは、裁判所は、一時訴訟行為をさせることができる。
2 訴訟能力、法定代理権又は訴訟行為をするのに必要な授権を欠く者がした訴訟行為は、これらを有するに至った当事者又は法定代理人の追認により、行為の時にさかのぼってその効力を生ずる。
訴訟代理人
①訴訟代理人とは
本人の名で、本人に代わって、代理人自身の意思決定によって訴訟行為をし、または裁判所や相手方の訴訟行為を受ける者をいう。
②訴訟代理人の種類
本人の意思によらない→法定代理人
本人の意思による→任意代理人
いずれの場合も、代理権の存在は書面で証明しなければならない。
代理権の消滅は、本人又は代理人から相手方に通知しなければ、効力を生じない。
③法定代理人
A【実体法上の法定代理人】
親権者・未成年後見人・成年後見人・保佐人・補助人・特別代理人
法人・法人格なき団体は、代表機関が訴訟を追行する。
第37条 この法律中法定代理人及び法定代理人に関する規定は、法人の代表者及び法人でない社団又は財団でその名において訴え、または訴えられることができるものの代表者又は管理人について準用する。
B【訴訟法上の特別代理人】
第35条 法定代理人がない場合又は法定代理人が代理権を行うことができない場合において、未成年者又は成年被後見人に対し訴訟行為をしようとする者は、遅延のため損害を受けるおそれがあることを疎明して、受訴裁判所の裁判長に特別代理人の選任を申し立てることができる。
2 裁判所は、いつでも特別代理人を解任することができる。
3 特別代理人が訴訟行為をするには、後見人と同一の授権がなければならない。
第236条 証拠保全の申立は、相手方を指定することができない場合においても、することができる。この場合においては、裁判所は、相手方となるべき者のために特別代理人を選任することができる。
④任意代理人
A【訴訟委任による訴訟代理人】
第54条 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることはできない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
第56条 訴訟代理人が数人あるときは、各自当事者を代理する。
2 当事者が前項の規定と異なる定めをしても、その効力を生じない。
第55条 訴訟代理人は、委任を受けた事件について、反訴、参加、強制執行、仮差押え及び仮処分に関する訴訟行為をし、かつ、弁済を受領することができる。
※特別授権事項を確認すること(55条2項)
第55条
3 訴訟代理権は、制限することができない。ただし、弁護士でない訴訟代理人については、この限りでない。
第57条 訴訟代理人の事実に関する陳述は、当事者が直ちに取り消し、又は更正したときは、その効力を生じない。