親族
①親族の範囲
第725条 次に掲げる者は、親族とする。
一 6親等内の血族
二 配偶者
三 3親等内の姻族
②血族と姻族
A血族・・・自然血族・法定血族
・自然血族関係は出生という事実によって生ずる
・法定血族関係は養子縁組の成立によって生ずる
第727条 養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。
養子縁組で親族関係が生ずるのは、「養子と養親の間」と「養親と養親の血族の間」である。
B姻族・・・配偶者の血族・血族の配偶者
・姻族関係は婚姻によって生ずる
・姻族関係は離婚によって終了する
第728条 姻族関係は、離婚によって終了する。
2 夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思を表示したときも、前項と同様とする。
③配偶者
配偶者は血族でも姻族でもないが、法律上は、親族の中に加えられる。
④親等の計算
第726条 親等は、親族間の世代数を数えて、これを定める。
2 傍系親族の親等を定めるには、その1人又はその配偶者から同一の祖先にさかのぼり、その祖先から他の1人に下るまでの世代数による。
⑤親族関係の効果
第730条 直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。
法律上の義務ではないと解される。
婚姻
①婚姻の成立要件
婚姻意思の合致+婚姻障害のないこと→婚姻届の提出により成立
【婚姻意思の合致とは?】
・婚姻の届出をする意思だけでは足りず、社会通念上の夫婦関係を設定する意思の合致が必要。(最判昭44.10.31)
・婚姻意思は婚姻届の「作成時」と「受理時」の双方に存在する必要がある。
・適式な婚姻届が作成され、それが受理された当時、たまたま本人が意識を失って意思能力を欠いていたとしても、その受理される以前に当事者が翻意したなどの特段の事情がない限り、婚姻届けの受理によって婚姻は有効に成立する。(最判昭44.4.3)
【婚姻障害のないこととは?】
①婚姻適齢(男18歳、女16歳)
②重婚の禁止
③再婚禁止期間
第733条 女は、前婚の解消又は取消しの日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚をすることができない。
2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 女が前婚の解消又は取消しの時に懐胎していなかった場合
二 女が前婚の解消又は取消しの後に出産した場合
④近親婚の禁止
第734条 直系血族又は3親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。
2 第817条の9の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。
第735条 直系姻族の間では、婚姻をすることができない。第728条又は第817条の9の規定により姻族関係が終了した後も、同様とする。
第736条 養子若しくはその配偶者又は養子の直系卑属若しくはその配偶者と養親又はその直系尊属との間では、第729条の規定により親族関係が終了した後でも、婚姻をすることができない。
⑤未成年の婚姻
第737条 未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
2 父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
・父母がなく未成年後見に付されている→未成年後見人の同意は不要
・父母が離婚→双方の同意が必要
【婚姻届の提出】
第739条 婚姻は、戸籍法(昭和22年法律第224号)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。
婚姻はいつ成立するか→○受理時 ×戸籍に記載された時
②婚姻の無効(遡及効あり)
A婚姻意思の不存在→婚姻は無効
・事実上の夫婦の一方が、他方の知らない間に婚姻届を提出しても、婚姻意思の不存在として婚姻は無効である。ただし、他方の配偶者が届出の事実を知った後も、夫婦としての実質的生活関係を継続した場合には、無効な婚姻の追認があったものとして、その婚姻は、届出の当初に遡って有効となる。(最判昭47.7.25)
B婚姻の届出の不存在 →婚姻は無効
※婚姻は当然に無効となる。
③婚姻の取消し(遡及効なし)
C婚姻障害がある(公益的理由)→婚姻を取消すことができる
※父母の同意を得ない未成年の婚姻は、取消事由とはならない。
・【取消権者】
原則 各当事者・親族・検察官(当事者の一方が死亡するまで)
例外 以下の場合、次の者も取消請求できる
①重婚の場合→当事者の配偶者
②再婚禁止期間内の婚姻の場合→当事者の前配偶者
・【取消方法】
家庭裁判所に請求してする。
・取消期間
制限あり(745条・746条)
D詐欺・強迫によって婚姻をした(私益的理由)→婚姻を取消すことができる
・【取消権者】
詐欺・強迫を受けた当事者
・【取消期間】
制限あり(747条2項)
④婚姻の効力
A夫婦同氏の原則
民法750条 夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する。
B同居・協力・扶助の義務
民法752条 夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。
C成年擬制
民法753条 未成年が婚姻したときは、これによって成年に達したものとみなす。
・成年擬制の効果は、婚姻を解消したとしても失われない。
D夫婦間の契約の取消権
民法754条 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
・婚姻中・・・形式的にも実質的にも婚姻が継続している間のこと
・夫婦関係が破綻している場合、破綻に瀕している場合は、夫婦間の契約は一方から取り消すことはできない。
E貞操義務(判例)
⑤夫婦財産制
夫婦財産制は2つに分かれる。
A契約財産制(夫婦財産契約を結ぶ)
B法定財産制(夫婦財産契約を結ばなかったときに適用)
第755条 夫婦が、婚姻の届出前に、その財産について別段の契約(夫婦財産契約)をしなかったときは、その財産関係は、次款(法定財産制)に定めるところによる。
A夫婦財産契約
第756条 夫婦が法定財産制と異なる契約をしたときは、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人及び第三者に対抗することができない。
第758条 夫婦の財産関係は、婚姻の届出後は、変更することができない。
B法定財産制
第760条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。
・婚姻から生ずる費用・・・生活費・子の養育費など
・婚姻関係が破綻し、夫婦が別居状態にあるというだけでは、婚姻費用分担義務は消滅しない。
第761条 夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りではない。
第762条 夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産とする。
2 夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。
・土地を購入し、妻名義で登記しても、資金を夫が提供したときは、その土地は夫の特有財産となる。