ブログ 七転び八起き

司法書士試験合格までの9年間を綴ったブログです。

八回目で念願の司法書士試験合格

不動産対抗要件と相続②(民法177条)

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今日は前回に引き続き、民法177条と相続(遺産分割)について勉強したいと思います!

 

では、177条のおさらいです。

 第177条

不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法その他の登記に関する法律に定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。

 

不動産の権利に関しては、登記をしなければ第三者に対抗できない、そして、日本では不動産については公信の原則は採用されていません、というのが前回までのお話でした。

 

また、177条はあらゆる物権変動に及ぶと考えられています。

 

つまり、売買によって権利が移転したとしても、相続で権利を取得したとしても、登記をしなければ第三者に対抗することはできません。

 

では、遺産分割協議があった場合はどうなのでしょうか? 

今日は、遺産分割によって所有権が移転した場合を考えていきたいと思います^^

 

では、例題です。

Aはある土地を所有していたが死亡し、相続人であるBとCが2分の1ずつ相続し、その持分で登記を入れた。

 その後、遺産分割協議をし、Bがこの不動産につき単独で相続をすることに決まったが、その登記をしないでいる間に、Cは自己名義の2分の1の持分をDに売却し、登記を移した。

Bは遺産分割により増加した持分を、登記なくしてDに対抗できるか?

 

Aさんには、妻がおらず、子供がBさんCさんの2人です。

Aさんが亡くなると、子供たちが相続分として2分の1ずつ取得することになります。

 

その後に遺産分割協議をして、Cさんの持分をBさんに譲ることになり、Bさんが単独でその土地を相続することになりました。

 

しかし、Cさんはお金に困っていたために、Dさんに自己の持分を売却し、その登記を入れてしまいました。

というお話です。

 

結論・・・Bさんは登記なくして、遺産分割により増加した持分をDさんに対抗することはできない。

 

遺産分割というのは、一般に、相続財産を相続人同士の話し合いで分けることを言います。Aさんには貯金と土地がありました。

なので、話し合いの結果、土地はBさんに、お金はCさんに、という具合で決まったとします。

 

普通に考えれば、遺産分割によってBさんが単独で土地を相続すると決まったので、Cさんは土地に関して無権利者となります。

 

無権利者のCさんから土地を取得したDさんももちろん無権利者です。

 

177条の言う第三者に、無権利者は含まれません。

なので、Bさんは登記なくしてDさんに対抗できそうな気がします。

 

しかし、判例は以下のように結論をだしました。

 

 不動産に対する相続人の共有持分の遺産分割による得喪変更については、民法177条の適用があり、分割により相続分と異なる権利を取得した相続人は、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産の権利を取得した第三者に対抗することができない。(最判昭.46.1.26)

 

つまり、不動産に対する相続人の共有持分の(Cさんの持分の)遺産分割による得喪変更については(BさんへCさんの持分を譲ることについては)、民法177条の適用があり、遺産分割によって相続分と異なる権利を取得した相続人は(遺産分割によって、2分の1の持分しか持っていなかったBさんが単独で相続できることになったことは)、その旨の登記を経なければ、分割後に当該不動産の権利を取得した第三者(のDさん)に対抗することができない。

ということです。

 

つまり、Bさんは、もともとの持分である2分の1のみ、登記なくしてDさんにも対抗できます。

しかし、遺産分割協議で増えることとなった持分である2分の1については、登記しなければDさんに対抗できません、ということです。

 

遺産分割の効力は以下のように定められています。

(遺産分割の効力)

 民法909条

遺産分割の効力は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。

 

ここでいう第三者はとは、遺産分割協議をする前に現れた人のことを指しますので、今回Dさんは該当しません。Dさんは、遺産分割後にCさんから土地を購入しています。

 

しかし、判例では、遺産分割の遡及効(相続開始の時にさかのぼって効力を生ずること)は擬制にすぎず、Cさんに相続されていた持分が遺産分割によってBさんに移転するという物権変動があるとします。

条文のように遡及効があれば、そのような物権変動はなく、そもそも最初からBさんだけが単独で取得しますから、判例では異なる結論が出されました。

 

なので、CさんからDさんへの売買による持分の移転と、CさんからBさんへの遺産分割による持分の移転と、二重譲渡があったものと同視されるので、民法177条が適用され、BさんとDさんは先に登記を入れた方が勝つのです。

 

遺産分割は、相続人同士の内々の話なので、第三者は知りようがありません。

よって、保護する必要性が高いと言えます。

遺産分割協議は、相続開始から何年以内にしなさい、というような規制もありません。

Dさんからしてみれば、登記簿をみるとBさんとCさんが半分ずつ持分を取得していると判明しますよね。

その後遺産分割で、Cさんの持分がBさんの物になっているとは、全くわからないわけなのです。

 

 

このように、相続に限らず、不動産に関する権利に変更があった場合は、やはり早めに登記をする方がいろいろなトラブルにあわないのだろうな、と実感しました(^_^;)

 

では、今日の勉強はここまでです~!

また明日~!!(o^^o)