今日は民法の親族法より、「婚姻」について勉強します。
結婚なんて、婚姻届を提出すれば簡単にできると思っていましたが、法律上はいろいろな規定があるみたいです!
では早速まとめてみたいと思います( ^ω^ )
1.婚姻の成立
親族法の一番最初で最小のユニットである婚姻についてまとめてみます。
婚姻が成立するには、「婚姻届を出すこと」と「婚姻する意思がある」ことと「婚姻障害事由に該当しないこと」が必要です。
婚姻の成立要件①
形式的要件である戸籍法の定めによる届出が必要です。
戸籍事務担当者がいったん届出を受理した以上は、たとえ戸籍簿に記載されていないことがあっても婚姻は有効である。(大判昭16.7.29)
婚姻の成立要件②
①意思の合致があることが必要です。
意思の合致がない場合は婚姻は無効となります。
つまり、婚姻するには意思能力が必要です。
婚姻の意思の合致は、「婚姻届出書を作成した時」と、「婚姻届の受理される時」の双方で存在しなければなりません。
「婚姻届を作成しているときは結婚するつもりだったけど、やっぱり結婚やめた~!」と一方が言ったにもかかわらず、他方が勝手に届出を出してしまった場合、結婚は成立しません。
生まれた子に嫡出子としての地位を与える目的だけのために、直ちに離婚する条件で婚姻届を提出した仮装身分行為については、婚姻の届出自体については当事者間に意思の合致があっても、それが単に子に嫡出子としての地位を得させるための便法として仮託されたものにすぎないときは、婚姻は効力を生じない。(最判昭44.10.31)
婚姻届が婚姻意思に基づき適式に作成されたのに、それが受理される時にたまたま一方が意識を失い、意思能力を欠いたとしても、その受理される以前に当事者が翻意などしていなければ、婚姻はその届出により有効に成立する。(最判昭44.4.3)
②婚姻障害事由に該当しないことが必要です。
婚姻障害事由とはなんでしょうか?
①つめが、婚姻適齢(男18・女16)に達していないことです。(民法731条)
②つめは、重婚の禁止です。(民法732条)
配偶者のある人は重ねて婚姻することはできません。
③つめは、近親婚の禁止です。(民法734条)
1.血族では直系・3親等内の傍系(法定血族・自然血族)での婚姻は禁止されます。
ただし、養子と養親側の傍系血族との婚姻は禁止されていません。
養子は、養親の実子と婚姻することはできます。
2.姻族では直系姻族(尊属・卑属)での婚姻は禁止されています。
3.養子もしくはその配偶者または養子の直系卑属もしくはその配偶者である者は、養親またはその直系尊属との間の婚姻が禁止されます。
④つめは、再婚禁止期間に女性が婚姻することは禁止されています。(民法733条)
これは、女性が妊娠したときに、前の夫の子か?再婚相手の子か?という状態を避けるためです。
以前は、この禁止期間が6ヶ月となっていましたが、それじゃ長すぎる!と違憲判決が出たため、昨年に100日に改正されました。
例外として①前婚の取り消し・解消の時に懐胎していない場合②前婚の解消の後に出産した場合には、100日を待たずして再婚できます。
⑤未成年の婚姻についての父母の同意を得る必要があります。(民法737条)
なぜかというと、社会経験の乏しい未成年を保護するためです。
同意をするのは「親権者・法定代理人」ではなく、あくまでも父母です。
父母が離婚していたり、親権を有していない時でも、その両方の同意が必要となります。(ただし、父母の一方が、同意しない場合、行方知れずの場合、死亡した場合などはもう一方の親のみの同意でよいです。)
父母双方の同意が常に必要となるのではなく、父母の一方が同意しないときは、他の一方だけで足りる。父または母の一方の同意があれば子の保護のための制度としては十分であり、更に父母の意見が相違することも少なくないため、双方の同意を要件とすると未成年の子の婚姻意思の尊重を図ることが困難になりかねないからである。
上記の①から④に該当する婚姻は、取り消しできるものになります。
⑤の、父母の同意がない場合の未成年者の婚姻は取り消すことはできません。
2.結婚すると、法律上どのような効果があるのか
結婚すると、苗字が変わる他にどのような効果があるのでしょうか?
①夫婦同氏の原則(民法750条)
夫か妻のどちらか一方の氏を夫婦の氏としなければなりません。
最近夫婦別姓にしたいということが話題になっています。
②同居・協力・扶助義務(民法752条)
一緒に住んで、協力して、扶助しなければなりません。
③ 成年擬制(民法833条)
成年擬制とは、未成年者が結婚した場合、成人に達したものとみなすことを言います。
子の親権者になることができるし、契約を結んでも「未成年だから」と言われることがなくなります。
でも、認められるのはあくまでも私法上の行為能力であり、飲酒喫煙はすることができません。
④ 契約取消権(754条)
夫婦間で契約をしたときは、その契約は婚姻中いつでも夫婦の一方からこれを取消すことができます。ただし、第三者の権利を害することはできません。
「婚姻中」とは単に形式的に婚姻が継続していることではなく、実質的にもそれが継続していることをいう。(最判昭42.2.2)
⑤貞操義務
夫婦は、互いに貞操を守る義務を負います。
不貞行為は離婚原因となりうるのはこのためです。
⑥ 財産
①法定財産制
1.婚姻費用分担(民法760条)
夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担しなければなりません。
この婚姻費用分担義務は、夫婦の共同生活が破綻し、別居状態に入ったとしても消滅しない。(大阪高決昭33.6.19)
2. 日常家事債務の連帯責任(民法761条)
夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をした場合、第三者を保護するために、夫婦の他の一方はそれにより生じた債務について連帯してその責任を負うのが原則です。
しかし、あらかじめその法律行為をする第三者に対して責任を負わない旨を告知していれば、第三者に対して不足の損害を及ぼすおそれはないから、連帯責任は発生しません。(民法761条但書)
3.夫婦財産別産制(民法762条1項)
夫婦別産制の採用により、夫婦の一方が婚姻前から有する財産および婚姻中自己の名義で得た財産は、その特有財産とされます。
例えば結婚前からの貯金とか、相続によって手に入れたお金とかです。
②夫婦財産契約
夫婦は、婚姻の届けを出す前に、①の法定財産制と異なる契約をすることができます。その場合、婚姻の届出までにその登記をしなければ、これを夫婦の承継人および第三者に対抗することができません。(民法755条・756条)
⑦その他
配偶者となる・相続権の発生・姻族関係の発生・子の嫡出化など
3.婚姻を取り消す場合とは?
婚姻を取り消す場合は、誰がどのようにするのでしょうか?
「婚姻の取り消し」と、「婚姻の解消(離婚)」は別のものです。
婚姻を取り消すことができるのは、婚姻障害事由の①~④に該当する場合(公益的取消原因)と、詐欺・強迫によって婚姻してしまった場合(私益的取消原因)の2つです。(民法743条)
この場合、家庭裁判所へ請求を行わなければなりません。
取消しを請求できる人は以下のとおりです。
①不適齢婚の場合(民法745条・744条)
取消権者・・・①当事者 ②その親族 ③検察官
不適齢者が適齢に達した後は、取り消しができません。
ただし、不適齢者自身は、適齢に達した後、追認をしない限り3か月間は取り消すことができます。
②重婚の場合(民法744条)
取消権者・・・①当事者 ②その親族 ③検察官 ④前婚の配偶者
③再婚禁止期間中の婚姻(民法744条)
取消権者・・・①当事者 ②その親族 ③検察官 ④前婚の配偶者
前婚の解消、取消の日から100日を経過した場合、または女性が再婚後に出産をした場合は、婚姻の取り消しはできなくなります。(民法746条)
再婚禁止期間・重婚に反した婚姻
再婚禁止期間の規定に違反した婚姻は、当事者の一方が死亡した場合であっても、その配偶者は取消すことができる。 当事者の一方の死亡による婚姻解消と、婚姻取消しとでは、相続権の有無及び姻族関係の存否などの点で異なり、婚姻を取消す実益があるからである。
重婚状態が生じた後、重婚の本人が死亡して重婚が解消された場合には、重婚を理由として後婚を取消すことができるかが問題となる。重婚の本人が死亡した場合でも、後婚の配偶者は配偶者として相続権を主張することができるので、前婚の配偶者としては、後婚の配偶者の相続権を失わせる実益がある。重婚禁止に違反した婚姻は、当事者の一方が死亡した場合であっても、その配偶者は取消すことができる。
前婚の離婚が離婚意思を欠き、無効とされたために重婚が生じ、その後後婚が離婚により解消された時は、特段の事情がない限り、後婚が重婚に当たることを理由として、その取り消しを請求することはできない。なぜなら、婚姻取消の効果は、離婚の効果に準ずるのだから、離婚後なお婚姻の取り消しを請求することは特段の事情がある場合のほか、法律上の利益がないからである。(最判昭57.9.28)
④近親婚(民法744条)
取消権者・・・①当事者 ②その親族 ③検察官
⑤詐欺・強迫(民法747条)
取消権者・・・詐欺・強迫を受けた当事者
当事者が詐欺を発見し、もしくは強迫を免れてから、3か月を経過し、または追認をしたときは取り消しを請求することはできなくなります。
上記①~④に検察官が含まれていますが、検察官は当事者の一方が死亡した場合は取り消すことができなくなりますので注意が必要です。
4.婚姻を取り消した場合の法律上の効果とは?
例えば、詐欺により結婚してしまった場合、その婚姻は取消しができます。(民法747条)
結婚を口実にお金を騙し取るのは刑法上の「詐欺」なので、別の話です。
結婚詐欺は、実際に籍を入れる前に逃げてしまうことが多いかと思います。
ここでは、「結婚する際に年齢を偽っていたことが分かったから結婚を辞めたい」「初婚って言っていたのに、実は離婚歴があった」などが事例となります。
実際に結婚したあとに、気づくパターンです。
その偽りに気づいたので婚姻を取り消した場合はどうなるのでしょうか?
事実関係を尊重する親族法の理念から、財産関係を除いて婚姻取消の効果は遡及せず、離婚と同じような効果が生じます。
①身分上の効果
遡及効はなく、以下は効果を失わない。(民法748条1項)
①成年擬制
②嫡出子の推定
③準正
②財産上の効果
財産を得た当事者は、相手方に返還しなければなりません。(民法748条2項・3項)
協議上の離婚の財産分与が、婚姻の取消しに準用されています。
いくら返還するかは、善意か悪意かで異なります。善意とは?悪意とは?
詐欺をした人が善意だった場合・・・・現存利益(残ってるお金だけでよい)
詐欺をした人が悪意だった場合・・・・全額返還しなければならないし、場合によっては損害賠償する必要がある。
以上、婚姻の成立と婚姻の効果、婚姻の取り消しとその効果をまとめてみました!
お付き合いいただき、ありがとうございました。