今日は民法総則の「不在者制度」と「失踪宣告制度」について勉強します。
1.不在者制度とは
①不在者とは
人は、一定の生活の本拠を中心に法律関係を形成していますが、これを住所といいます。
民法第23条 各人の生活の本拠をその者の住所とする。
不在者とは、この、住所を去って容易に帰ってくる見込みのない人のことを言います。
この不在者の財産管理をするための制度を不在者制度といいます。
①不在者が財産管理人を置かなかった場合に
②法律上の利害関係人・検察官が請求して
③家庭裁判所により財産管理人を置く等の措置をとることが可能となるシステムです。
(家庭裁判所が選任した管理人は、管理する財産の目録の作成をしなければなりません。)
では、条文を見てみます。
民法第25条
①従来の住所または居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下のこの節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
②前項の規定による命令後、本人が管理人をおいたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
②不在者管理人の権限とは
不在者の財産管理人の権限は、以下の二つに限定されます。(民法103条)
①保存行為
②代理の目的である物または権利の性質を変えない範囲においてその利用または改良を目的とする行為(管理行為)
これ以上の行為をする場合は家庭裁判所の許可が必要です。
では、条文を見てみます。
民法第28条
管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
たとえ、不在者が管理人を置いていても不在者の生死不明時は、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求により、管理人を改任することも出来る。(26条)
不在者の存命が明らかであるときは、管理人のコントロールは不在者本人が行うべきなので、家庭裁判所は改任することはできない。
裁判所は、管理義務違反や返還義務違反の危険がある場合に、管理人に担保の供与をさせることも出来る。(29条)
2.失踪宣告制度
一定期間生死不明で、死亡の可能性が高い場合、利害関係者のために死亡したものとみなし、既存の法律関係を終了させる制度です。
生きているか死んでいるかわからない、だから再婚したくてもできない、とか、保険金を受け取ることができない、という推定相続人などの利害関係者のための制度です。
(※ただし、本人の権利能力は消滅しないので注意です。)
請求者は、法律上の利害関係人です。
検察官は請求できません。
つまり、義務化されているわけではないので、まだ生きていると信じたい場合は無理に失踪宣告をしてもらわなくてもよいのです。
①普通失踪
不在者が生存していると知れた最後の時から7年経過すると、7年経過時に死亡したとみなされる。
②特別失踪
戦地に臨んだ、沈没した船にいた、などの危難が去って1年経過したら、その事故があった時に死亡したとみなされる。
これら失踪は、「みなされる」なので「推定する」場合と異なり、事実が異なることを証明しても認定は覆りません。
なので、事実が異なる場合は取消しをしなければなりません。
法律って難しいですね(;´・ω・)
では、条文を見てみます。
民法第30条
①不在者の生死が七年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
②戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後一年間明らかでないときも、前項と同様とする。
民法第31条
前項第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した後に時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したとみなす。
「利害関係人」とは、失踪の宣告により直接に権利を得、または義務を免れるという法律上の利害関係を有する者をいい、事実上の利害関係を有する者はここに含まれない。(大決昭7.7.26)
③失踪宣告の取消し
失踪宣告を受けた者が、 ①生存していることが証明された場合②失踪宣告によって死亡されたとみなされる時と異なる時期に死亡していたことが証明された場合、失踪宣告を取消すことができます。
請求権者は、本人・法律上の利害関係人です。
初めから失踪宣告がなかった場合と同様の効果が生じて、法律関係は復活します。
よって、遺産をもらった人は本人に返さなければならなくなります。
この場合、善意の(失踪宣告を受けた者が生きていることを知らなかった)受益者は現存利益の返還で足ります。
どういうことかというと、例えば父ちゃんが生死不明の状態が続き、失踪宣告を受けたとします。でも実は、密かに生きていたとします。
長男と次男は、父ちゃんが生きているということを本当に知りませんでした。
父ちゃんが生きて帰ってきたため、失踪宣告を取り消しました。
長男と次男は、それぞれ遺産として父の財産を300万ずつ受け取っていましたが、失踪宣告が取り消されたため、父に返さなくてはならなくなりました。
長男は、100万を遊んで使ってしまい、残り200万しかありません。
この場合は、200万を父に返還すればいいですよ、ということです。
次男は、100万を生活費に使ってしまい、残り200万しかありません。
この場合は、300万を父に返還しなければなりません。
「・・・?」ってなりますよね!
遊興費は返さなくていいけど、生活費や債務の弁済で使ったら返還する必要があるというのはなんかしっくりきませんが、こうなるらしいのです(;´・ω・)
生活費や債務の弁済によって、本来払わなければならないものを払わずに済んでるから、返さないといけません、ということです。
悪意の(生きていることを実は知っていた)受益者は、全額返金と解釈されています。
では、①失踪宣告⇒②失踪者の土地を相続人が売った⇒③失踪宣告が取り消された
という場合、②の契約はどうなるのでしょうか?
②の売買の当事者の双方が善意の場合、その行為は有効となります。
相続人も、土地の買受人も、両方が失踪者が実は生きていたことを知らなかった場合、その土地の売買は有効になります。
うーん、わかりにくい文章ですみません・・・(;'∀')
説明するって、難しいですね・・・
では、最後に条文を見てみます。
民法第32条
①失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
②失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
ということで、今日は民法総則より「不在者制度」「失踪宣告制度」を勉強してみました。
お付き合いいただきありがとうございました。